セミナー報告書
共催:「新日本様式」協議会
「伝統と近代性の調和に見られるフランスと日本の秀逸性」
2007年3月19日
フランスには文化面において、また日本には独特の自然との接し方において、伝統と近代性をうまく調和させるという秀逸性があります。さて、均衡、快適性、技術的前進と言った要素をバランスよく調和させるためには、今後どのような形でイノベーションに取り組めばよいのでしょうか。こうした問題にフランスと日本はいかに取り組むべきかなのでしょうか。 Ces 2007年3月19日(月曜日)、パリ商工会議所を会場に、両国の産業関係者や財界のリーダーが集い、こうした問題をテーマにセミナーを開催いたしました(主催:パリ商工会議所、「新日本様式」協議会、日仏経済交流委員会。協力:在仏日本大使館、日本経済産業省および国土交通省、JETRO)。
セミナーはピエール・サイモン氏パリ商工会議所会頭(Monsieur Pierre Simon)代行のピエール=アントワーヌ・ガイイ副会頭(Monsieur Pierre-Antoine Gailly、パリ商工会議所副会頭) の歓迎の辞で幕を開けました。ガイイ氏は日仏外交150周年ならびにCEFJ設立10周年が目前に迫るこの時期に、講演者を迎えられることができ、栄誉と喜びを感じると述べました。そして、秀逸性とは、高級ブランドのみならず、工業・サービス分野における成功例に見られるように、最先端技術と百年の伝統から生まれたノウハウの共存から生まれる、こうした才能は日仏の顧客ニーズを同時に満たしえるものである、ポール・クローデルが指摘したように日本とフランスは「本能的な親しみ」を感じあっており、特別な結びつきがある、と続けられました。
講演に先立ち、飯村豊駐仏日本大使が、日本の日常生活にみられる一般製品の紹介を目的とした「新日本様式」協議会(CJM)の促進キャンペーンをフランスで開始できることに喜びを感じると述べられました。市場競争の激化を意味するグローバリゼーションの只中で開催される本セミナーは、高いポテンシャルの源泉となる、あらゆる分野における多様かつ強力なパートナーシップの促進を応援するものである、また、2008年は日仏外交150周年を記念して、重要な文化イベントや、地方自治体間で多くの交流が行われる記念すべき年となるだろう、との指摘をされました。
進行役の磯村尚徳氏(初代パリ日仏文化会館館長、元NHK欧州総局長)より主催者の調整作業に対する謝辞が述べられた後中村邦夫氏(「新日本様式」協議会理事長、松下電器産業代表取締役会.
長)が基調講演を行いました。 以下、中村氏の講演内容です。
「このセミナーは非常によい時期に開催されました。つまり、日仏間の経済関係は、かつてないほど良好であると言っても過言ではないからです。日本企業400社がフランスに進出しており、またフランスからも多くの企業が日本に進出しています。日本の対仏輸出額は8,562億円、フランスの対日輸出額は9,407億円となっています。両国は自由と民主主義の伝統、そして歴史や文化という共通の背景を持っています。
90年代、日本は経済分野において、空洞化、デフレ、解雇などを経験したものの、2002年以降、内需に誘導された金融バブルを受け、経済は回復し、飛躍の10年を迎えています。
成長を持続するためには以下7つの条件が必要です。
- しっかりとした経営理念
- 技術力
- 製造・販売構造の軽さ
- 改革の実行
- 株主を満足させる高い利益
- 顧客中心の考え
- 信頼できる従業員の存在
さて、『新日本様式』協議会(CJM)の活動は、デザインと高度技術を駆使したコンテンツとの融合、新日本様式の設定というプロセスを踏襲しています。2006年1月に設立されたCJM(企業56社、23団体が加盟)は高付加価値製品の尖兵『メイド・イン・ジャパン』の競争力向上を目指しています。
日本の伝統の真髄は絶え間なきイノベーションにあり、ノウハウを外国に伝えた現在、製造業は再び日本に戻ってくるべきです。」
そして、中村氏は松下電器産業を例に挙げて続けました。
「弊社は創設者の死後12年目に赤字に転じました。この状況を打開するため、新たな事業分野を立ち上げ、販売体制を改革し、よき伝統を踏襲しながらも日々改革を続けました。その結果、大変ありがたいことに、再び黒字に転じることができました。
適応しなければ、会社は危険に瀕します。さて、現在、自然や環境が重要なテーマとなっています。
急速な工業化の時代が終わった今、我々は公害を減らすための活動を実施し、また新エネルギーにも目を向けています。
我々は有害製品を禁じる規則をいち早く導入しました。環境との共存なくして、もはや企業は生き残れません。こうしたアプローチを世界に向けてアピールすることもCJMの使命のひとつです。」
次の講演者に移る前に、磯村氏が日本は「最も伝統があり、かつ革新的な国である」と述べられました。
続くティエリー ムロンゲ氏(Monsieur Thierry Moulonguet、ルノー最高財務責任者)
の基調講演では、まずグローバリゼーションの3大特徴が示されました。
- 大きく異なる国や文化の多様性、およびこの多様性を管理する能力。
- 挑戦を伴う複雑性、および非常にスピーディーな状況の変化。
- 経済スピード。
以下、モロゲ氏の講演内容です。
「コンクリートとガラスを見事に活用し、自然との素晴らしい調和を図った直島の現代美術館の設計者である建築家、安藤忠雄氏のように、自身が受け継ぐ伝統と世界の現代性を融合させることが重要です。
日産とルノーの提携は両社の歴史を尊重しつつ、良いものは共有するといったスタンスをとっています。
我々の生産能力を共有しつつ、ブラジル、メキシコ、スペインなどで業務の単純化を図りました。「コピーすること、それはゲインすること」というベスト・プラクティスの発想を実践し、仕入れ組織を共有しました。
新興市場への進出にあたっては、中国では日産が、インドではルノーが舵をとりました。パートナーの経験の共有は、協力と競争を促進します。」
続いて、ティエリー・ジャキヤ氏(Monsieur Thierry Jacquillat、パリ・イル・ド・フランス・キャピタルエコノミック会長、元Pernod-Ricard社長)が、ヨーロッパ1の経済地区、パリ=イル・ド・フランスの秀逸性、そしてその長所について語りました。
以下、ジャキヤ氏の講演内容です。
「CCIPが創設し、約百社が加盟するパリ・イル・ド・フランス・キャピタルエコノミックには2つの重要な使命があります。すなわち、外国人投資家に対する地域の宣伝、そして地域の魅力向上を目的としたロビー活動の展開です。
2001年以降、パリ=イル・ド・フランス地区はヨーロッパの大都市圏中最も高い成長を記録し、地域GDPは欧州最高で(4810億ユーロ)、インフラは質量ともに充実しています。
有能な人材を抱えるイノベーションの中心地でもあり、ヨーロッパで最も多くの研究者が集まり、System@tic Paris-Région、Medicen、Cap Digitalという競争力の高い3つのクラスターがあります。
また、パリはユーロ圏における重要な金融の中心地であり、13のフランス企業が世界のトップとなっています。
そして、会社不動産のコストと質という2つの大きな長所もあります。」
ジャキヤ氏は最後に「パリは今後も世界における観光首都であり続けるでしょう」と述べ、講演を終えました。
以下識者による公開討論会
基調講演に続き、福川伸次氏(CMJ顧問、機械産業記念事業財団会長),
がCJMの目標を紹介しました。
- 工業に新たな活路を開く。
- 「日本」ブランドの力を強化する。
- - 日本の文化的・技術的な価値を再評価する
- - 成長加速の要因である高度技術と文化との融合を図る。
そして、「日本の文化の特徴は、美の概念、自然、ふるまいの心、たくみの心、おもてなしの心などにあります。バラエティーに富んだ分野から一流の人物を集め構成された評議会委員会では、革新的あるいは使いやすい製品コンセプト、伝統技術の使用などを評価基準に100のより良い製品を選定します。」との説明を行いました。
続いて、オリヴィエ・メルリオ氏(Mellerio International社長、コルベール委員会元会長)がフランス風生活術の象徴である高級品産業を理解のヒントとしながら、以下のように述べられました。 「世界がオープンになったことで、特にコルベール委員会(70の一流ブランドが加盟)とともに我々の地位を強化することできます。高級品とはなんでしょうか。この言葉の語源は光ではなく、骨折することなく、骨の関節がはずれること、つまり、脱臼です。
高級品は創造と伝統を結び付けます。高級品産業は1,400億ユーロ市場であり、フランスはその内34%を占めています。高い付加的価値を伴うブランドは物質と非物質を結合し、人々に夢を与えます。」
メルリオ氏は最後に「我々の事業の中心は人間です。我々の顧客は人間です。高級品を高度先端技術と対峙させるのではなく、収束点を見つけなくてはなりません。」と述べスピーチを終えました。
迫本淳一氏(CJM副理事長、松竹株式会社社長、歌舞伎の2007年パリ公演責任者)のスピーチでは、日本の三大古典芸能の1つ歌舞伎の粗筋を1つ簡単に紹介した後、この人気のある芝居はその起源より、すでに市場の要求に応えるものであったと述べ、エンターテイメント産業は現在重要なターニングポイントにあり、デジタル産業やインターネットと結びつき、さらに多くの大衆が触れられるようにしなければならない、と語られました。
最後に、 ミシェル・ルブッフ氏(SNCFフランス・ヨーロッパ旅客開発部長),
が、TGVとその進化、そして新幹線との比較を交えつつTGVの長所を紹介しました。以下、氏の講演内容です。「日本は速さ、スピード、ダイヤの多さ、時間の正確さ(日本の列車の平均遅延時間は6秒)、安全性、環境遵守の点で開拓者でした。素晴らしい快適性、サービス、収益性の秀逸性は日本の鉄道ノウハウの特徴です。」
そして、ルブッフ氏はTGVがまもなく大きく進歩することを告げました。「運行車輌400輌以上、停車駅は250以上となります。6月10日に開業するTGV東線は時速260kmから時速360kmとなり、シュトットガルトやミュンヘンを結び、国際連絡がより便利になります。新しいTGVはオートクチュールの象徴、クリスチャン・ラクロワがデザインを手がけています。」